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【首相「体罰禁止を法定化」 虐待防止法改正 】

【首相「体罰禁止を法定化」 虐待防止法改正 】

記憶に新しいニュースです。
「心愛ちゃん、結愛ちゃん」という犠牲者をだしてようやく動いた国の現状です。
上記「体罰禁止を法定化」に奮闘された明橋先生からメールをいただきました。
全国のHAT子育てアドバイザー宛て(松本も一員です)です。

先生から了解をいただいたので皆様にシェアします。
長文ですが「子育て中の皆さま、関係者に是非、読んでいただきたいです」
   
    以下、明橋先生からのメールをそのまま掲載です。 
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    【この改正法のポイントはここ!!】

「親を罰するための法律ではなく、体罰の危険性を啓発するための立法であること」
「体罰の禁止とともに、体罰にかわるしつけの方法の啓発がセットでなければならないこと」
だと思っている。

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子育てをしていく中で、どうしても手が出てしまう、ということはありうることなので、
時には、「そういうふうに悩んでいるのは、まだいい方なんですよ。本当に問題なのは、叩いても、
それを悩むことのない人なんですよ」

さて先日、テレビ朝日の報道ステーションで、体罰禁止法案についての私のコメントが放映されましたが、実際は一時間くらいの取材で話したことが、5分程度に短縮されていましたので、見ていた人の中でも色々と誤解もあったようです。

1年前の目黒の結愛さん虐待死事件、また今年1月の野田市の心愛さん虐待死事件、いずれも父親が「しつけ」としてやっていた、と自分の行為を正当化したところから、体罰の問題性が改めて認識されたわけですが、一方で、日本国民の6割はいまだ「体罰は時には必要だ」と考えている、という統計もあります。ネットを見ても、むしろ今回の禁止法案には反対の立場(体罰がよくないのはわかるが、家庭のしつけまで、国が介入するのはどうか)というような論調も多く見られます。

私は、ここ数年、日弁連やセイブザチルドレン、あるいは、虐待防止の市民団体などとともに、体罰禁止法の制定に向けて活動してきました。今後も国会で改めて議論されると思いますので、アドバイザーの皆さんとも共有したいと思い、その要旨を以下に書かせて頂きます。

1.体罰の危険性は、すでに科学的に立証されている。 
体罰を用いると「その時は言う事を聞く」という「効用」はあるが、長期的には、1)攻撃的になる。2)反社会的行動に走る。3)精神疾患の発症率が上がる、という三つのリスクが高まる。
(ガーショフ2002年https://www.kodomosukoyaka.net/pdf/2002-meta-jp.pdf#page=1)
日本の調査でも、体罰を用いたしつけは、短期的に見ると有効に見えても、時間がたつにつれ、特に言葉、社会性の発達に、はっきりと遅れが生じていた。
(服部祥子・田原正文『乳幼児の心身発達と環境―大阪レポートと精神医学的視点―』)
厳しい体罰を受け続けた子どもの脳において、前頭前野という行動や感情をコントロールする部分が、19.1%萎縮していることが明らかになった。(福井大学 友田明美医師)

2.確かにリスクが上がるということであって、皆がそうなるわけではない。
 だが、薬のことを考えてほしい。この薬は、自分が子ども時代によく効いたから、子どもに飲ませようと思っていた。しかし最近、その薬に、重大な副作用のリスクがあることが判明した。そういう薬をでは子どもに飲ませるだろうか。体罰も同じ。

3.ただ、体罰にも二通りある。
 体罰をいいことだ、必要だと思っている体罰と、体罰はしたくない、でもついつい叩いてしまう、という体罰。
 どちらの体罰がより問題かというと、前者。 後者は悩む、だから相談にも来るし支援も入る。しかし前者は、悩まない。だからエスカレートする。これが虐待につながる。
 だから、体罰の法的禁止といっても、それは親を罰するための法律ではなく、目的は、体罰の危険性を知らせるための立法。


4.こういう認識が世界に広がり、現在、体罰を全面的に禁止する法律を制定した国は、世界で54ヶ国に上っている。この数はどんどん広がっている。
 最近よく話題に上るSDGs(持続可能な開発目標:2015年に国連が採択) でも、2030年までに世界の国が協力して、17項目の目標を達成することが定められた。その中に、子どもへのあらゆる暴力を撲滅することが掲げられている。日本は、その理事国になっている。世界中の国で、子どもへの暴力をなくすために、リーダーシップを取らねばならない立場なのに、その国が子どもへの暴力を容認しているというのはおかしなこと。


5.では、実際、体罰を禁止した国ではその後どうなったのか?
1979年、世界で初めて体罰を全面禁止したスウェーデンでは、虐待などにより親子分離が必要なケースが2000年までに3分の2に減少した。フィンランドでは体罰が減少するとともに、殺害される子どもの数も減少した。
 多くの国で虐待が減少していることから、WHOやアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、体罰の法的禁止を、虐待防止のためのエビデンスのある施策として提唱している。


6.体罰を禁止すると、子どもが言うことを聞かなくなり、犯罪が増えるのではないか?
→スウェーデンでは1983〜1996 年に窃盗、麻薬、子どもに対する暴力や強姦などの様々な犯罪に関与した 15〜17 歳の子どもの数が減少し、 1971 から 1997 年の間の若者の自殺、酒や薬物の使用が減少している。


7.体罰を禁止すると、では子どもをどうしてしつけたらいいのか?という疑問が生じる。
 だから、体罰禁止法の制定は、体罰に代わるしつけの方法の啓発と、必ずセットでなければならない。
 体罰に代わる有効なしつけの方法はすでに開発されているし、有効性も実証されている。(コレンセンスペアレンティング、ペアレントトレーニング、ポジティブ・ディシプリンなど)
 逆に体罰を肯定する人は、まず、体罰以外のしつけの方法を学んでいない。例えるなら、副作用がなく有効な薬が開発されているのに、それを知らないために、古い副作用の多い薬を用いているのと同じ。


8.だから、体罰禁止法の制定は、児童虐待防止に向けての大きな一歩と考えられる。
以上です。
 
せっかく尊い命を受けながら、虐待により親から殺される子どもが一人でも減ってもらいたいと心から願っています。
     professor 明橋大二

※写真は”ここらいふ”主催の講演会での先生

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